裏表紙の著者略歴によりますと、「田舎暮らしライター。1959年北海道北見市生まれ。85年から田舎暮らしの取材を始め、日本でただ一人の田舎暮らしライターとして活動。2001年より福島県都路村(現在は田村市都路町)に移り住み、農村内部で田舎暮らしのさらなる可能性を模索している。」山本一典が住んでいるのは都路村の通信環境も良い集落内で、山村というわけではありません。けれども、田舎暮らしの取材歴は長く、田舎在住のライターなので中身が濃い情報を発信し続けています。
田舎暮らしの失敗の原因として、農村に対する理解や田舎暮らしに対する基本的な知識の不足が挙げられます。「学ぶ能力がないのではなく、田舎の空間を自己実現の道具としか見ていないからだ。」実体験に基づく辛口の論評には説得力がありますね。羽根を伸ばしに来る都会人と、生活の場としている地元の人とでは意識のズレが大きいです。定年退職前後の年齢で経済的余裕を持って田舎暮らしを開始→自然の中で土いじりを楽しみ地元にも貢献→体力が落ちたら都会のマンションに再引越し、なんていうのが理想ですが…。先立つものがないと絵に描いた餅ですね。
都会のギスギスした人間関係に疲れたから、広くて隣家が見えない田舎でのんびり羽を伸ばしたい。→人が少なければ助け合いが不可欠で、人間関係は濃くなり排他的な傾向も強まります。対人関係でストレスを感じやすいなら、都会のマンション暮らしのほうが気楽なはずです。日雇い派遣も楽じゃないから、物価の安い田舎で自給自足でもするかな。→稼げるお仕事がないので田舎から都市へと人口が流失したのであって、年金生活者以外は生計を維持するのは簡単ではないし。穀物もお野菜もただでは作れません。お金のことだけ言えば、自給自足よりスーパーで買ったほうが安いかもです。
「山本一典のページ・本の紹介」に「お金がなくても田舎暮らしを成功させる100ヶ条」の小見出しが全てアップされています。チェックリストに使えます。「七.年に百八十万円以上の生活費を確保する→国民健康保険料や国民年金も含めると月に10万円では暮らせない。」「四四.予算一千万円以下なら補修不要な中古を狙え!→移住者が転売する築20年以内の空き家期間が短い物件が狙い目。」「五七.通信インフラは事前に聞いておく→ADSLどころかISDNすら使えずダイヤルアップの地域もあるorz」
「三〇.冠婚葬祭と共同作業で地域社会を学ぶ。」これが抵抗なくできて、地元に溶け込めるかがポイントかな。お金の問題をクリアできても、田舎のしきたりを人のつながりと考えて前向きに捉えられるかが次のハードルです。「三五.隣近所とは絶対にケンカしない。」これが鉄則でしょうね。どこに住んでも近隣関係はやっかいですが、血縁関係が多い小さな集落でトラブレば豊かな自然も色あせちゃいます。街中のように合わなければ無視しあう、というわけにもいかないでしょうから。区費や祭りの寄付金が高い…。農業関係の共同作業を強制されるのは納得できない…。などと感じたら、住民票を移さない週末利用にしたほうがお互いの幸福につながるようです。
ネガティブに傾くかというと、成功例もあります。川崎市の30代後半の娘さんがいるご夫婦の館山への移住記事がありました。「移住というと「第2の人生」「セミリタイア」とのイメージが強いが、千葉県館山市には若い世代の移住者が多い。」首都圏での福祉関係のお仕事が精神的・肉体的にハードだったそうです。「館山の就職事情は厳しい。給料は半分以下に下がった。住民税は前年の年収に応じて徴収されるため頭が痛い。家探しも苦労し、約20年間空き家だった平屋を見つけ、月1万5千円で借りている。花楓ちゃんの教育問題もある。」それでも「仕事や生活のストレスがぐっと減った。生活レベルが下がったとは感じない。サーフィンをして仲間と酒が飲めて…まるで毎日が夏休み」だそうです。
ふつうのサラリーマンですと、このあたりからの20年くらいで貯蓄する人生設計が多いのでは?人生さまざま、人それぞれですから、自分にとっての幸福を選択することになります。みんなが田舎暮らしを選ぶと、税収不足&消費減退で日本はデフレスパイラル真っ逆さまの気もしますが…。でも、国のために個人が生きているわけでもありませんから、ゴーイングマイウェイかな。
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